【完】溺れるほどに愛してあげる
「やだなぁ。そんな必死にならなくても」
立ったまま動けない俺の周りを陸はくるくると歩き回る。
その顔はやはりニヤニヤしていて。
この状況を楽しんでるような、そんな顔。
「本当ここにいて良かったですよ。
間近でちぃさんの表情見れるんだから」
またも意味のわからない発言をするものだから、もう一度名前を呼ぼうかと思ったがその必要はなかった。
「教えてあげますよ。
充分楽しんだし。
…面倒なことも起きそうだから」
「は?」
そして話し始めた陸に俺が抱いた感情といえば。
生まれてからこれまで感じたことのない怒り、憎悪。
そしてショック。
3つの感情が入れ代わり立ち代わり現れる。
ただ底辺には信じられない、信じたくない思いがあって…そんななんとも言い難い感情が心の中でうずまく。
お前は…今まで…俺のことを?
俺を見て楽しんでたっていうの?
なぁ、陸。
ずっと俺のこと騙してたの?
今までの陸は全部偽物…演技?
一緒に笑いあった時も変な連中に絡まれた時も。
あれも全部……嘘?