【完】溺れるほどに愛してあげる
陸くん、と聞いて千景の眉がぴくりと動く。
「行ったんだ」
「うん」
「何かさ。今までの陸、全てが嘘だなんて演技だなんて思えないんだ。
俺が罪を犯しそうになった時、必ず止めてくれたのは陸だから…もしかしてそれも、警察に関わりたくなかったから…?」
「千景…」
「陸はどんな様子だった?」
「千景のこと、気にしてたよ」
そう。それはほんの数日前のこと。
*
「陸くん」
「…!優愛さん…」
今日の彼はすっかりいつもの陸くんで、少しだけ拍子抜けしてしまう。
あの日の彼は何だったのか…
「あの、ちぃさんは…!」
そう聞く陸くんの目は真剣で、演技なんかじゃない。
まずこんなところで演技なんてする必要がないんだから本心だろう。
「うん。大事には至らなくて、もうすぐ退院できるよ」
「良かった…」
「…陸くん」
こんなにも千景のことを気にして心配してて…今回のことには何か裏があったんじゃないかって思ったその瞬間。
「優愛さんになら、いいかな。僕の話…聞いてもらえますか?
本当は墓場まで持っていくつもり…だったんですけど知っててほしくなりました」
「…うん?」
そして、陸くんの口から出た話は誰も想像がつかないくらい衝撃的なものだった。