【完】溺れるほどに愛してあげる
「今週の土曜日、誕生日だけどどうする?」
11月3日、文化の日。
それがあたしの誕生日。
誕生日が祝日なだけあって、とっこは毎年当日に祝ってくれる。
そんな特別な日がもうすぐやってくる。
「え、誕生日?!」
千景は声が裏返りそうなほど驚き、身を乗り出してあたし達の話に入ってくる。
「まさか言ってない…とか?」
「…そのまさかですね」
「聞いてない…」
三者三様の表情になる。
あたしは、やっちまったと頭を抱え。
とっこは、信じられないとでも言うように目を見開き。
千景は、もう数日しかない…と焦っている。
だ、だって…色んなことがありすぎて誕生日なんて忘れてたし…
気付いたら暑かった日差しもなくなり、肌寒くなってた。
気付いたらもう11月で。
「私は…日曜にでも祝おうかな」
「…え」
「だって当日は金田くんに残した方がいいでしょ?」
とっこの話を聞いて、千景はぶんぶんとクビを縦に振る。
次の日、千景から水族館のチケットを貰った。
「朝から夜まで、俺にちょうだい」
「…うん」
言い回しが凄く恥ずかしく感じて、でも嬉しくて。
今年の誕生日はいつもより何倍も楽しみになった。
自分が生まれた日を、大好きな人と過ごせる。
きっと土曜日は世界で1番幸せ者かもしれない。