【完】溺れるほどに愛してあげる


「優愛が可愛いことするのが悪い」

「な、投げ飛ばしただけなんだけど?!」

「俺以外触っちゃダメだから」





なんだか雲行きが怪しいような…?


千景ってこんなだったっけ?!





「亮の家に泊まりに行った時も、俺達と寝ようとするし」

「だ、だって…まさか違う部屋を用意してくれてるなんて思わないじゃん!」

「だとしても!仲間とはいえ7人も男がいる空間に寝ようとするなんて…無防備。危機感がなさすぎる」





少しムッとしたような顔になる。





「そんなに怒らなくても…」

「怒ってるんじゃなくて心配してるの」





こんなにしっかり気持ちをぶつけられたのは初めて。


…ずっとそんな風に思ってたのかな?





「キャラ…変わってません?千景さん…」

「独占したいの。俺だけの優愛がいい」





水族館に着いて、その前でじっと目を見つめられながらそう言われる。


恥ずかしいんだけど、少し嬉しくて。


だって。





「ふふ。そっか…」

「なに?」

「そんなにあたしのことが好きなんだな〜って」





きっと周りから見たらあたし達は完全なバカップル。


…でも、それでいいって思った。


昔はバカップルを見たら思うところがあったけど、実際当事者になったら何も考えられなくて。


ただ幸せだなってそう思う。





「…!」





なのに。





「そうだよ。頭の中、優愛でいっぱい。傍にいないだけで落ち着かないし」

「…ち、千景…」





制止させようとするけど止まらない。





「溺れるくらい愛してあげるって言ったでしょ」

「い、言ったけどさ…!」

「ね、優愛…」





明らかに千景とあたしの間で違いがある。


気付いているあたしと、気付いていない千景。


あたしだけを見つめてくれる千景と、周りが気になってしまうあたし。





「今日は…帰したくない」





まだ朝なのに、そんなことを言う千景をただ一心に感じていたい。


でも、やっぱり気になっちゃうの。

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