【完】溺れるほどに愛してあげる
「国語の先生に言って、体育祭の練習させてもらえることになった!」
「おぉー!!
よくやった源田!」
あたしの予想通り、うちのクラスは体育祭に向けて順調に歩みを進めていた。
みんなが体育祭を楽しみに盛り上がってる。
とてもいい雰囲気。
だからこの人にもちゃんと感じてほしい。
昨日と同じように少し重めのドアを力いっぱい押す。
「…よく来れるな、あんた」
自分でもそう思う。
あんなに怒らせてしまったのによくここに来れたな…って。
でもお昼休み、気付いたら屋上のドアの前にいたんだよ。
「いい感じに盛り上がってるよ、みんな」
「そう」
「一緒にやろうよ」
「俺は参加しないって言ってるでしょ」
それでもあたしは引かない。
絶対この人と一緒に体育祭をやりたい。
「…はぁ」
伏し目がちに視線を落とす。
その仕草がただでさえ長いまつげをより一層際立たせて、妙に色っぽく見える。
「源田のおかげで数学の授業も貰えた」
「誰、源田って」
「あたしの前の席の子だよ」
「知らないし」
知ってよ。
もっと興味持ってよ…
キーンコーン…
授業5分前、予鈴のチャイム。
「ほら鳴ったよ」
他人事みたいに言ってるけど、あんただって本当はこんなとこにいちゃいけないんだからね?
もう少し話したかったけれど仕方ない。
授業に遅れるわけにはいかないから。
…こいつと違って。
「明日も来るからね」
「…はいはい」
たったそれだけの4文字に心が踊る。
…また、来てもいいんだ。
何だか許された気がして凄く嬉しくなった。