【完】溺れるほどに愛してあげる
「本当に来るつもりなんですかね、あいつ」
朝、いつものように教室まで行く途中そんな会話が聞こえた。
普段なら絶対そのまま通り過ぎるけれど…
金田と坊主の会話だったから気になってしまって聞き耳を立てる。
「さあ?
そうなんじゃない。本人が言ってるんだし」
「よく来ますよね。怖くないんすかね」
あたしのことだ。絶対これあたしのことだ…
「直接聞けばいいんじゃない」
すると金田の声が近くなる。
え、なに…近付かれてる…?
…バレてる?
「そこにいるんでしょ、あんた。
盗み聞きなんて趣味悪い」
「す、すみません…」
大人しく2人の前に姿を現すと、ため息をつく金田と顎が外れそうなくらい口を大きく開けた坊主がいた。
「こいつが、怖くないのかってさ」
「そ、そうだ!俺らが怖くねぇのか、あぁん?!」
坊主がまたも声を荒らげるけど…
「…慣れた」
と素直に言うと、がくっとうなだれて足から崩れていった。
「だってさ亮。ドンマイ」
この坊主の人、亮って名前だったんだ。
それすらも今知る。
「ごめんね、坊主…じゃなくて亮くん」
「ぼっ坊主…」
「ははっ、それは違いない」
あたしの言い間違えによって、さらに深く傷ついたと思われる坊…亮くん。
そして初めて見た金田の笑顔に胸がキュンと弾んだ。