【完】溺れるほどに愛してあげる
「聞いて!」
いつものようにお昼休み、屋上のドアを勢いよく開けてそう言い放つ。
また来たか、そんな表情を浮かべている……と思ったのに…
「こっちもあんたに聞きたいことがある」
なんて真面目な顔で言われて、周りもあたしを見つめている。
変な不安が頭をよぎる。
聞きたいことって…なんだろう…?
「あんただろ。
俺が俊足だとか変な噂が立ってるらしい」
い、いつの間にそんな噂が広まってしまったのか。
この人達が知ってるってことは…結構色んなところに広まってると予想できる。
「足、速くないの…?」
せっかくこのことでみんなが盛り上がってたのに…
「千景さんは…俊足よりもどんそ……」
「おい」
吹き出しそうになりながらそう言う亮くんに喝を入れる金田。
え…今、鈍足って言おうとした?
もしかして、すっごく足が遅い…の?
「悪いけど、そういう理由だから体育祭には出ない」
あたしが変なこと言っちゃったから…
クラスのみんなに納得してもらおうと口からでまかせ言ったから…
だってまさか金田の足が遅いなんて思ってもみなかったから〜!