【完】溺れるほどに愛してあげる
翌日のお昼休み、屋上へ向かう。
私が浮かべるのは満面の笑みで、金田は怪訝な顔をしている。
もちろん、こんなに嬉しいのはこれ以外にありえない。
「昨日!来てくれてたよね、学校まで!」
あたしがそう言うと金田は目を大きく見開いて口をわなわなさせている。
亮くんや他の子達も一気にこっちを見る。
「あっ、あんたは大ぼら吹きだな!」
「嘘なんかついてないし!」
でもこの前クラスのみんなに金田の足が速い…なんて口からでまかせ言ってしまったあたしの言葉はなかなか信用されないみたいで、すぐに興味を失くした様子の彼ら。
でもね、本当の本当に見たんだよ。
金田が学校の外にいたこと。
「その証拠に…写真も撮ったし」
ってカマをかけてみる。
ひっかからないか、そんな簡単には。
逆に見せてみろって言われたら…あ、ヤバい。また変なこと口走ったかも…
「お、おおおい!消せよ!」
面白いくらいの動揺。
一旦興味を失くしていたみんなも、さっきより興味津々にこっちを見ている。
「ち、千景さん…マジですか」
「ちょ、こっち来い!」
みんなに囲まれそうになった金田はあたしの腕を掴んで屋上を後にする。
「ごめん、写真撮ったって…カマかけた」
「マジかよ…あんた本当に何なの」
今まで聞いた中で1番長いため息を吐く金田。
だってさ、嬉しかったんだもん。
あんなに行かない、出ない、参加しないって豪語してたのに…
体育祭に興味を持ってくれたんだもん。
そりゃあ嬉しいですよ。満面の笑みですよ。
「ふふ」
「何笑ってんの。
こっちは笑い事じゃないんだけど」
貴方に変化を届けることが出来て、嬉しいんです。