【完】溺れるほどに愛してあげる
溺愛*2章
仲間
体育祭が終わって、少しだけ金田に近付けた気がした。
…気がしたのに、実際の距離は離れてしまった。
だって、もう彼らの元に行く理由がなくなってしまったから。
体育祭への勧誘として来てただけ。
でもそれももう終わってしまったから…
ここ1ヶ月、顔も見なくなってしまった。
金田が教室に来ることもなく、あたしもお昼休みに屋上へ行くこともなくなった。
「…あ!」
だから久しぶりに見たこの顔を嬉しく思ったんだと思う。
そうじゃなかったら話しかけないよ。
「久しぶり!
元気してた?」
「お、お前…」
綺麗なくらいのまんまる坊主、亮くん。
あたしを見るなり、げって口に出そうなくらい眉間に皺を寄せて少し後ずさる。
何よ。別に話しかけたっていいじゃん。
「しばらく見ないと思ったら…
聞いたのか?」
「え、何を?」
金田達の情報はほとんど入ってこない。
…見かけたっていうのは聞くけど。
主に女の子から。
前にも金田が王子か何かのような反応をしてる子がいたけど…最近増えてきてる。
イケメン…だからかな。
それは認める。
怖くないのって聞いたら
近付けないけどワイルドで格好いい!
って。
見た目ががっちり不良で怖いのに、目はすごく冷ややかでクール!
って。人気が出始めている金田 千景。
それに伴って正直少し焦っているあたし。
だってさ、好きだって気付いちゃったの。
そんな人が女の子から人気…なんて不安しかない。
この前までは何だか金田と近いところにいると思ってた。
少なくとも他の女の子よりは…
でも今は他の子と変わらないじゃん。
そんなの嫌。不安。
もし、この亮くんとの出会いがきっかけとできるなら…?
あたしはこの機を逃すわけにはいかないんだ。