【完】溺れるほどに愛してあげる
「僕も優愛さんみたいになりたい…」
そう言うのは赤髪の男の子。
金田のグループにいるにしてはあんまり怖くないしがっしりも…してない。
普通に不良なんかやめればいいのに、って思うけど…
「強くなりたい」
「そうなんだ」
「ちぃさんみたいになりたい」
ちぃさん?と首を傾げると、どうやら金田のことらしかった。
高校に入る前から友達だった2人。
でも高校になると、金田の元で強くなりたいって思い今に至るらしい。
あたし達と同じ2年生。
「陸さん!抜けがけずるいっす!」
そう言って赤髪の子──陸くんに覆いかぶさるように抱きつくのは亮くん。
「そんなに強くなりたいの?」
「え?…はい」
そんなに強くなってどうしたいの?
喧嘩で勝つために…強くなりたいの?
こんなに普通そうな子が不良だなんて似合わないよ。
「俺らに何か文句でもあるわけ」
「文句って…そんなんじゃないけど」
「じゃあ何?」
あたしには理解ができないだけ。
強くなりたいならボクシングとか…他にもあるじゃない。
喧嘩じゃなく試合として勝てばいい。
不良、なんて反抗的なものにならなくてもいいのにって思う。
「学校なんて行っても楽しくないからね」
ここにいる子はみんなそう思ってるの?
だから不良の道を選んでしまったの?
そんなことないよって言いたい。
学校はみんなが思ってるほどつまらないものじゃないよ?
それを、みんなにも知ってほしいな…