【完】溺れるほどに愛してあげる


もう会わないもんだと思ってたのに、いつの間にか俺らの集まる場所を突き止めて1人でやって来た。



元々屋上は風が当たって清々しい気分になるから好きだった。


ここを好きだというやつは俺以外にもいたようだが、俺らが来るとそそくさと去っていったから何の戸惑いもなくここにいる。





「…午後の授業。ホームルームに出てほしいの」





聞くと体育祭の種目を決めるらしい。


俺はどちらも出るつもりはない。


高校にはある人との約束のために来ただけ。


大して楽しくもない、面倒なだけだ。




俺は行かない、とはっきり断ったはずなのに





「…あたし、諦めない」





そんな主人公めいたセリフを吐いて、実際毎日のように屋上に来た。


何が決まっただの、名前も知らないクラスメイトが何をしただのあんたは嬉しそうに喋っていた。


その内に俺もだんだん絆されてきて少しだけ体育祭というものに興味がわいたんだ。


『金田 千景は俊足らしい』


そんな噂を聞いて、やっぱり絶対に出ないと決めたけど。



小さい頃から走るのは苦手だった。


必死に走っても周りに負けるばかり。


俺の横をすっと駆け抜けていく。

あ、また負けたとそう思うのが心底嫌だった。


だから滅多なことがない限り走ろうとも思わなかったし走らなかった。

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