【完】溺れるほどに愛してあげる
「あ、金田…!」
放課後、校門の近くで金髪を見かけた。
この学校の制服で金髪なんて金田くらいだからすぐわかる。
「…!?」
昼休みの屋上以外でなかなか見かけないから嬉しかった。嬉しかったのに…
見たくなかった。
だって、隣にいるのが…
「最近、高嶺さんがよく来るんすよ」
白百合学園の高嶺 美麗さんだから。
「亮くん!」
「昼に千景さんには止められたんですけど、あの弁当も高嶺さんがくれたんです」
「高嶺さん…」
あれが買ったものか、手作りのものだったのか…それは聞けなかった。
だって手作りなんて言われたら…どうしたらいいかわからなくなるから。
「中学の時、付き合ってたらしくて」
うん、知ってる。
毎日を楽しくも何ともない、なんて言ってた金田が付き合ってた人。
可愛くて性格もいいっていう高嶺の花。
金田も釣り合うくらいに格好いい。
言いたくないけど、言いたくないけど…お似合いの2人。
「復縁したりして…」
もし、そんな事態になったらあたしは…?
金田に何も伝えられないまま、そしてこれからも伝えることなく終わってしまう。
好きだってことも、学校が楽しいってことも…自分の気持ちだけじゃなく金田に知ってほしいことも…全部全部言えなくなる。
そして、あたしは金田から距離をとるようになって見つめてるだけになって…それでも金田があたしを見ることはなくて。
空席のままの隣を寂しく感じながら過ごすことになる。
記憶はあるだけで辛いから捨てようとしてだんだん頭の中から金田が消えていって、いつしか忘れてしまう。
こんな気持ちを持ってたことさえもきっと忘れてしまう。
…そんなの悲しいよ、寂しいよ…