【完】溺れるほどに愛してあげる
「城崎 優愛さん?」
朝、学校へ向かってる途中にそう声をかけられる。
「高嶺 美麗さん…」
真っ白くそしてワインレッドがとても上品な制服に身を包んだ美少女──高嶺 美麗がそこにいた。
「知ってくれてるんだ」
小さな顔。
真ん丸の目に大きな黒い瞳。
筋の通った綺麗な鼻にふっくらぷっくりした唇。
透き通るような白い肌にほんのりピンク色の頬。
お人形さんかってくらいに整った顔がやんわりと微笑む。
周りに花が咲いたみたいな華やかさ。
あぁ、地球にはこんな人種がいるんですね…
同じ人間とは思えないよ。
「金田 千景…も知ってるよね?」
「…はい」
「だよねぇ?」
やっぱり金田のことか、と少し俯きがちだった顔を上げると高嶺さんはさっきまでの表情とはうって変わり右の口角を釣り上げていた。
「私と千景が付き合ってたの、知ってるでしょ?」
「…はい」
「とっても愛し合ってたの」
それをわざわざあたしに言いに来たのか。
復縁、したいのかな。するために金田の元に?
「最近周りをうろつくやつがいるって。鬱陶しくてうざいって…貴女でしょう?」
「…あたし?」
「隣の席らしいけど、それで千景に近付こうって魂胆?浅ましいわね」
どんどんどんどん可愛らしい顔とは裏腹にダークなオーラが漂い始める。
…怖い。
高嶺 美麗って…こんな人なの?
性格もいいなんて嘘じゃん。
実物はこんなにも殺気立ってて怖い。
ゴゴゴゴゴって効果音がつきそうなくらい腕を組んで仁王立ちであたしを睨んでくる。
「貴女じゃ千景を、彼の闇を支えきれないわよ。私じゃないとダメなの」