【完】溺れるほどに愛してあげる
「何…それ。ありえない!!」
金田の足がピタリと止まったのは、あんなに可愛い顔をした高嶺さんがドスの効いたような声で叫んだから。
「昔も、今も。お前が見てるのは俺じゃないだろ。周りから俺への評判。
俺の傍にいたがるのは見栄だろうって…俺が気付かないとでも思った?」
ただ静かに言うその言葉で、高嶺さんはわなわなと崩れ落ちていった。
「金輪際、俺に…優愛に。近付いたらただじゃおかないからな」
スッキリした、みたいな顔でまた歩き出す金田。
「ふっふざけるな…この私をコケにして!
あんたなんてねぇ、顔だけよ!話もしない、笑いもしない。顔が良くなかったら近付きもしなかったわよ!
この顔だけ男!!」
高嶺さんの叫びを聞いてもピクリともしない。
あたしが気になってちらりと彼女の様子を見ると、顔を両手で覆い床にペタッと座り込んで肩を震わせていた。
その姿を見て、不覚にも心が痛くなってしまった。
さっきの言葉は…全部本当のこと?
金田が顔だけなんて…高嶺さんはそんな風に思っていたの?
…もしそうだとしたら。
あんなにも崩れるように泣きじゃくるだろうか?
でもたとえ、彼女が金田を本当に好きだったとしても…あたしは負けない。
もう何も行動せずに奪われるのを指くわえて見てるなんてしない。
それくらい本気だよ。
どれだけ可愛い子が相手だろうと、あたしだって金田を好きなのには代わりないから…