【完】溺れるほどに愛してあげる


「俺の親父は死んだよ」

「…ごめんなさ…」





やはり聞いてはいけなかった。


慌てて謝ろうとすると、その声を遮って金田は続ける。





「留置所で」

「…え?」





思ってもみないことを話すものだから自分の耳を疑ってしまう。





「俺が小4の時に、元同級生を殺した──殺人の罪で逮捕された。でも親父は絶対にやってない。冤罪に決まってるんだよ。でも、それを証明する前に病気で…」

「そんな…」





きっとこれまで金田は壮絶な人生を歩んできたことだろう。



たくさんの人に後ろ指を指され、白い目で見られ、辛い言葉や痛い言葉を投げられて、それでも懸命に生きてきたんだろう。



そして、今でもお父さんの無実を信じている。





「こんなこと、初めて人に言った。何でだろうね…あんたには知っててほしくなった」





あたししか知らない…金田の一面。


きっと亮くんや陸くんも知らない。


彼らよりも…金田の内側に入れたことが不謹慎にも嬉しい。





「高校に行けって言ったのも親父なんだ。
わざわざ高校なんて…別によかったのに。親父に言われたら…行かないわけにはいかなかった」





上からみたいな言い方になるかもしれないけど、あたしが思ってることを伝えたい。





「みんなは時間を無駄にしてるよ」





これはあたしの持論。


今のあたしが思うこと。

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