【完】溺れるほどに愛してあげる
救済
「…なに」
「えと…ごめんなさい」
見上げる金田の瞳はどこか悲しげで、それがとても意外だった。
いつもそんな顔をしているの?
そう気にかかってしまったからこそ言ってしまったのかもしれない。
「染色、長髪、ピアス、制服にカバン。全部校則違反…だよ」
こんな不良に食ってかかるやつなんてあたし以外にいるのだろうか。
近くを歩く全員がこっちを向く。
目を丸く見開いて。
どんどんとあたしに注目が集まる。
「あぁ?お前、千景さんに喧嘩売ってんのか!」
後ろにいた坊主もあたしの背後で声を荒らげる。
その声でさらに視線が集まっていく。
「あいつに喧嘩売るとかどんな猛者…(笑)」
「おい、あれ…城崎じゃね?」
気付くとギャラリーが何倍にも増えている。
窓からも、遠くからあたし達を見ている。
「…だから?」
それでも金田の冷ややかな瞳は変わらない。
「校則は、守らないと…」
「俺はいいの」
「よくない!」
あたしもつい大きな声を出してしまう。
つられて周りのざわめきも大きくなる。