【完】溺れるほどに愛してあげる


「小学生は小学生、中学生は中学生、高校生は高校生の時しかできないことがたくさんあるんだよ。
高校(ここ)にいるからこそ出会えた人、そしてこれから出会う人。教室で受ける授業も、高校でしか経験できない。特に体育祭や文化祭みたいな行事は"二度"とない。今、しかできないことなんだよ。
金田のお父さんが高校に行けって言ったのはそういう出会いやその時にしか経験できないことをこれから歩む人生の糧として礎としてほしかったんじゃないのかな」





なんて、お前に親父の何がわかるんだと怒られるかもしれない。


──ごめんね、あたし勝手なこと言っちゃった…


そう言おうとしたけど、衝撃によって声帯が仕事をしなくなった。





「…か、金田!?」

「…ありがとう」





それは金田があたしを抱きしめたから。


金田の体温と、呼吸を感じる。



あたしはドキドキが止まらなくて、頭が沸騰してるみたいにグラグラして直立不動でしかいられなかった。





「いい匂いだね…」





あたしは抱きしめられたまま、不意に髪をすかれたことにビクリと体を震わせた。





「み、みんなと同じ匂いだよ?」





全員が亮くんのシャンプーを使っていて、もちろんあたしも使わせてもらった。


だからみんな…金田も同じ匂いのはず。





「ううん、何か違う…」





さっきまでと声のトーンが変わって少し低く甘くなる。





「金田…?」

「女の子の…匂いが…す、る…」





あたしの体にかかる金田の重さがずんと大きくなっていく。


まさか…

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