【完】溺れるほどに愛してあげる
「眠いの?」
気のせいか、さっきより金田の体温も上がったように感じる。
触れているところがじんわりと暖かくなる。
「ん…」
今にも寝そうな返事が来る。
…寝られたら困るんだけど…
部屋まで運ばないとだし。
さすがに夏とはいえ、ちゃんと布団で寝ないと体に悪いよ?
「待って待って、起きて!
部屋まで行こう?」
「…ここでいい」
「良くないよ、風邪引いちゃう!」
「……」
呼びかけても返事がなくなり、腰に回された腕をほどこうにも力が強くてほどけなくて、あたしはしぶしぶ金田共々地面に腰を下ろした。
「嘘でしょ…」
そうは思うけれど安心しきったようにスースーと寝息を立てて眠ってしまった彼を起こすような無粋なことはできなかった。
あたしは崩した正座のような格好で、金田は両手を回して抱きついている。
さすがに頭を地面につけるのは可哀想で、あたしの膝の上に乗せてあげた。
やっぱり整った顔だな…なんて寝顔を上から見ながら右手で彼の頭を撫でた。
きっとこんなこと金田に知られたら怒られるだろうと思うからこれはあたしだけの秘密。
母親に甘える子どものように、子どもをあやす母親のようだ。
こんな金田を見てあたしも穏やかな気持ちになったのか、急に眠気が襲ってくる。
「ふわぁ〜…」
そのまま意識が途切れた。