【完】溺れるほどに愛してあげる
「何なの、あんた」
何なの、と聞かれても。
あたしだってわからない。
何でこんなにこだわってるの。
校則は守らなきゃいけない。守るものだ。お父さんによく言い聞かされた。
だけどここまでするもの?
こんな不良に楯突いてまで?
あたしにもわからない。
ただどうしてか、この人は放っておけないって思ってしまった。
「…2年6組 貴方の隣の席の者です」
「…あぁ、教室には行かないよ。
隣はいないもんだと思っていいから」
そう言い捨てて行ってしまった。
あたしはというと緊張から解放されたためか、腰を抜かしてぺたんと床に座り込んでしまう。
ひんやりとした質感が今の出来事は現実なんだと教えてくれる。
坊主は距離が離れてからもなお睨んできて、あたしはまるで石になったかのように動くことができなかった。