【完】溺れるほどに愛してあげる
「夏祭り、か」
「みんなと行くの?」
あたしのこと誘ってくれないかな、なんて下心を見せないように夏祭りへ話題を転換した。
「いや、行かない」
…あたしはなんて馬鹿なんだ。
自分で聞いて、自分でショックを受けて傷付くなんて。
オウンゴールも甚だしい。
人混みが嫌い?
こんな暑い中外になんて出たくない?
深く聞きたい思いはあるものの、これ以上は聞けなかった。
多分ショックが大きすぎて。
「そ、そっか…」
ただ一言、これしか声にならなかった。
そこから話はしたけれど、あたしは少しだけ声のトーンが低くなったんだと思う。
「…楽しくなかった?」
彼を心配させるほどに。
「えっ?あ、ごめん…めちゃくちゃ楽しかったよ!」
夏祭り、金田とは行けないんだ…なんてショックを受けたからといって今の金田にこんな…眉を下げるような表情をさせてはダメだ。
あたしの勝手で、期待しすぎたせいで傷付いただけなんだから。
「…そう?」
それでもまだ金田は訝しげな表情を浮かべる。
思いっきり笑顔を作って、金田の前にぴょんと飛び出る。
「金田がLINEYくれて本当に嬉しかった!
誘ってくれて、アイスもくれて…楽しかったよ!」
それは正真正銘あたしの本当の気持ち。
嘘偽りない本音。
それを聞いた金田はホッとしたように肩をなでおろした。
「それなら良かった。
家帰ってから何か…話したくなって」
その言葉だけで充分だよ。
夏祭りなんか一緒に行けなくても、そう思ってくれてるって知ることができて嬉しい。
「あたしもなんてメッセージ送るか迷ってた、ずっと」
あたしが携帯を握りしめていた間も、金田はあたしのことを考えてくれていたのかな。
少しだけ、気持ちが通じあってるような気がして…繋がってるような気がして心がポっと暖かくなった。