【完】溺れるほどに愛してあげる





月日は恐ろしいほど早く過ぎていき、もう8月1日。


『8月5日はご予定あります?』





とっこがそんなメッセージを送ってくる。


『日曜日?何にもないよ』





ショッピングでも行こうか…そんなことを考えながらとっこの返信を待つ。


するとバイブ音が忙しなく複数回鳴り続ける。


『え』

『何で!?』

『何で予定ないのよ!』

『8月5日は何の日かわかってる!?』

『夏祭りだよ、夏祭り!!』

『金田くんと行かないの?!』


そんなに文節でわけて送らなくても…と内心では思いながらも


『行かないよ。とっこ一緒に行こうよ』


冷静に返事をする。


タイマン公園で金田と話して以来、ショックすぎて夏祭り自体を記憶から抹殺していた。



忘れてたもん、夏祭りなんて。


でも思い出した今、やっぱり行きたい思いでいっぱいになる。


去年とっこと行ったし今年も…とそう思ってたのはあたしだけらしい。


『優愛は金田くんと行きなさい!』


そうは言ってもね?金田はお祭り自体行かないって言ってるんだよ。


そんな人を無理やり誘ってまで…行きたくない。


実はお祭りすごく嫌いで、でもあたしの誘いを断りきれなくて一応来たはいいもののやっぱりお祭りは嫌いだし楽しくない…なんて、そんな状況になってごらんよ。


もう立ち直れない。


『夏祭りは行かないんだって。
人混みとか、嫌いなんだよ』


あたしとしては、それなら仕方ないね…一緒に行こうかって返事を期待していたんだけど…


とっこは厳しかった。


『私は行かないよ!
優愛が金田くんと行かないんだったら1人で行きな!』


そ、そんなに言うこと!?



…今年は夏祭りに行けないかもしれません。


1人でなんて嫌だもん…

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