【完】溺れるほどに愛してあげる


「厨房ならやってもいい」

「そうだよね…したくないよね……ってえ!?」

「やってほしいんでしょ?」

「そっそうだけど!いいの!?」





体育祭だってあんなに嫌そうにしてたのに。


文化祭なんてもっと面倒くさいよ?


準備とかしなくちゃいけないし…


あたしはその準備だってみんなとできるから楽しいって思えるけどさ。





「優愛がいるから、やる。
優愛がいれば多分、楽しいから」





まるで何でもないような口振りで、あたしにとってはすごくすごく嬉しいことをさらっと言ってのける。



きっと無意識なんだろうな。


金田のその言葉でどれだけあたしが舞い上がりそうになっているか…





「今度、クラスの集まれる子だけで集まろっかってなってるんだけど…」

「行くの?」

「行くつもりだよ」

「なら…俺も行く」





本当に!?


あたしはパチパチと手を叩いて喜び、挙句の果てには金田に抱きつこうとしてしまった。


そして、


何か決まれば連絡するね!と


そう告げて別れた。


金田は家の近所まで送ってくれて、その間もいろんな話をした。


去年の文化祭の話とか、中学の頃の話とか。



ただ、あたしは。


LINEYのクラスグループに金田を招待することはしなかった。金田から何かを言われることもなく。


何故か嫌だったんだ。


みんなが金田のLINEYを持ってしまえば、あたしの特別感がなくなってしまう気がして。


クラスメイトと同じような位置づけになってしまう気がして嫌だった。




…そう思うことはいけないことなんだろうか。


独占したいって欲望は、いけないものなんだろうか…

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