【完】溺れるほどに愛してあげる
--Chikage:Side--
いつもより早く目が覚めて、いつもより早く用意ができたため近くにある親父の墓へ行こうと決めた。
きちんと報告したかった。
今までのこと、そして今日のこと。
墓へ着いて、話す内容の大半が笑ってしまうくらい優愛のことで。
出会った日、つっかかってきたこと、しつこく体育祭に誘ってきたこと、藤堂を投げ飛ばした日、そして夏祭りの日。
思い出せばいろんな感情が湧き上がってくる。
こんなの初めてで、思わず頬が緩んでしまう。
今日だって優愛のウェイトレス姿はとても可愛いんだろう。いや、可愛い以外にありえない。
そんな姿を多くの男が目にする…そんなことを考えるだけで腹が煮えくり返りそうになる。
もちろん彼女の強さは認めている。
護身術かなにかを習っていたんだろうと思う。
でも、それが効かない状況だったら。
そうなればただの女の子。
もし、変なやつに目をつけられたら…俺がちゃんと守ってやらないと。
親父への報告を考えているうちに、どんどんと自分の気持ちに整理がついて優愛が俺の中でどれだけ大きい存在かっていうのが、優愛がどれだけ大事かっていうのを改めて思い知らされる。
そこで、小さい頃に親父が言ってたことを思い出すんだ。
『千景、いいか。もし心から大事だと思える人ができたらちゃんと守ってあげるんだよ。お前のこの手で、守るんだ。
そして気持ちは伝えろ。言わなくても伝わるだろうなんて考えるな?千景の思ってることはきちんと口に出さないと伝わらないんだ。
千景が選んだ人ならきっと大丈夫だよ』
言われた時はただ漠然と聞いていただけだったが今は痛いくらいにわかる。
優愛をこの手で守りたい。
頬を流れる涙を拭いたい。
夏休み中にみんなで集まった日にだって、優愛が1人で泣いていたのを見ていることしかできなかった。
優愛が何を思ってたのか俺にはわからない。
それはきっと優愛も同じかもしれない。
だから今日、もう一度ちゃんと俺の気持ちを伝えるよ。
友達と話すこと、授業を受けること、みんなでする行事がこんなに楽しいなんて…優愛に出会わなければ知らないままだったから。
今この景色を見られているのは優愛のおかげ。
俺の中で優愛は唯一無二で何にも代えられないほど大事な人だよ。
それはきっとこれからも変わることがない。
俺が思ってること、そして優愛が考えていること…ちゃんとわかり合いたいって思うんだ。