【完】溺れるほどに愛してあげる


「うわ、ヤバいっ…」





時計を見ると確実に遅刻決定。



学校のことを話しに来て、学校行事に遅れるなんて元も子もない…





「じゃあまた来るから」





手を合わせて目をつぶると、親父が俺に向かって微笑んでいるような気がした。





「ごめん、遅れたっ…」





全速力で走って息は切れ切れ。


それでも文化祭が始まってまだそんなに経っていない時間に来られた。





「金田くんっ…」





すると、俺を裏に引っ張る森さん。優愛がとっこと呼ぶこの子がいるのに優愛はいないのか?





「優愛は?」

「優愛が…」





申し訳なさそうに放ちたその言葉は、俺の頭を貫くような衝撃と血の気が引くのを感じるほどの恐怖があった。



…藤堂。


あの日、優愛に投げられたことを根に持ってるのか…


あいつならやりかねない。


優愛が危ない。非常に危ない。

今すぐ助けに行かないと…





「悪いけど…!」

「助けに行って?こっちはいいから…優愛のこと助けて…!」





森さんの必死の懇願を聞くまでもなく優愛の元へ行くつもりだった。


優愛は俺が守らなきゃいけない。


それに…藤堂と優愛が会ったのは俺のせいだから…


文化祭で盛り上がる学校内は全て探した。


…学校外?


それならば、一つしか思いつかない。


足が遅くたって気にしない。

それ以上に全速力で走ってやる。


頼むから無事でいて…





「……っ…」





この先の小屋から声が聞こえる。


ここは通称タイマン公園。


…優愛が藤堂を投げた場所。



わざわざこんな所を選ぶなんて…


だけどこの声が優愛のものなのか、藤堂のものなのか…判別できなかった。


優愛がいるのはわかるけど。


何故だかわからないがいるような気がするんだ。





「おいっ!」





小屋のドアを足で蹴り開ける。


そこにいたのは…

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