【完】溺れるほどに愛してあげる
手足を縛られ目隠しもされ四つん這いになった藤堂と、ムチを持ってその藤堂を叩いている優愛。
…何だこの異様な光景は。
「か、なた……?」
戸惑いだらけの俺の視線と、今にも泣き出しそうに潤んでる優愛の視線とが交わる。
俺を見つけると優愛はムチを藤堂の方へ放り投げて駆け寄ってくる。
バチンって大きい音を立てて藤堂の背中に直撃する。
…どうしてお前はそんなに嬉しそうにニヤついてるんだ藤堂…
「金田ぁ〜…!」
本当に怖かったのか、いつもならしないハグを優愛の方からしてくる。
俺はそんな優愛をもっと強く抱きしめ返して頭を撫でる。
「大丈夫だったか?
怪我とか…変なことされてない?」
すると、ふるふると頭を横に振る。
とりあえずはホッと胸を撫で下ろす気持ちになる。
「変なことはされてないけど…
変なことさせられたの…」
あれ…と、藤堂とムチを指さす。
「千景ぇ…よくも邪魔してくれたなぁ…」
呻くように低い声で投げかけられる言葉。
藤堂ってこんなキャラ…というか何してたんだこいつは。
「急にここに連れてこられて…叩けって」
は?
叩く?
どこのSMクラブだよ。
お前…叩かれる趣味なんかあったのか?
とりあえず藤堂を縛ってる紐と目隠しを取ってやる。
「俺はこれまであの日を忘れたことなんてないんだよ…
彼女に投げられたあの日を…
女にあんな風に投げられて思った。"いい"と…」
おいおいおい…
優愛に投げられたのがきっかけでMに目覚めたってか?
「だからもっと…もっといたぶって…蔑んでください優愛さまあああ!」
「よ、寄ってこないで!!」
よろよろと近寄ってきた藤堂をいとも簡単に平手打ちで倒してしまう。
「いい、いいぃ…」
小屋の床に顔をつけるように横たわりながらひくひくと痙攣している体。
「優愛、行くよ」
そんな藤堂を横目に見ながら優愛の手をとって小屋を出る。