【完】溺れるほどに愛してあげる
「ご、ごめんね?
来てくれて嬉しかった…ありがとう」
まだ震えが収まらない手をぎゅっと握る。
怖かったんだ。怖かったはずだ。
優愛がとりあえずは無事で良かった…
「すげぇ心配したんだからね」
「ごめん…」
優愛のことだから、ホイホイついてったわけじゃないと思う。
何か考えがあって、その通りに動いたんだと思ってる。
「俺のことも頼ってよ。
自分だけで背負い込まないで」
俺がそう言うと、優愛の大きく丸い目からキラキラと雫がこぼれる。
「迷惑…かけたくなくて」
迷惑なんて、思わない。
それよりももっとたくさん頼られたい。
それが優愛の中で迷惑というのなら、迷惑をたくさんかけてほしい。
「優愛のためなら大歓迎だから」
こぼれ落ちる涙を拭い、そっと唇に触れるだけのキスをして言う。
「金田は…どうしてそんなにあたしに優しくしてくれるの…?」
そんなの、好きだからに決まってる。
だけど…
「あたしなんて金田と釣り合うような容姿でも存在でもないのに…」
ぽつりと呟くそれは間違いなく優愛の本音で。
俺にとって優愛は唯一無二で、命をかけたいほど大事な存在なのに。
「金田には金田に合う世界があって、お似合いの女の子がいるんだろうって…みんなと話してる金田を見て思ったの…」
本当は泣きそうなくせに無理して笑顔を作ろうとする。
それで最近、変だったんだな。
俺は何にも気が付けなかった。
気持ちはちゃんと言葉にしないと伝わらない。
俺はこれを伝えるために来たんだよ。
「優愛…聞いて」
涙が流れるのを堪えるようにぎゅっと目をつぶっている優愛。
こんな表情をさせたいんじゃないんだ。
優愛には笑っててほしいから。