【完】溺れるほどに愛してあげる
「優愛がいなかったら、俺はこんな感情を抱くことはなかったよ。
友達と辛いことも嬉しいことも共有するのがこんなに楽しいなんて知らなかった」
愛おしむように言葉を発する。
俺の気持ちが伝わるように、届くように。
「優愛は俺の中で唯一無二で、今もこれからもそれは変わらない。
他の誰より好きだよ。優愛しかいらない。優愛以外考えられないよ」
ぎゅっと抱きしめて耳元に口を寄せる。
「信じて。優愛より大事な人なんてこれから先もいないから」
ぽんぽんと頭を手で優しく叩くと、我慢していたものが溢れ出るように涙声をあげた。
「ふ…っう…ご、めんね…」
何度も"ごめん"と声にする優愛の口をふさぐ。
謝ってほしいんじゃないんだ。
「笑って、優愛」
少しぎこちなく作られた笑顔はそれでもキラキラと輝いていて、流れる涙がそこからさらに付け加えるようにキラキラと光っていた。
「接客、するんでしょ?
本当はそんな格好誰にも見せてほしくないけど」
ハンカチで涙をぽんぽんと叩くように拭いながら、優愛は首を傾げる。
…なんでわからないんだよ…
そう思ったものの、さっきの俺の気持ちにエネルギーを使いすぎてこの言葉を言うには足りなくなってしまった。
「金田は美味しいの作ってね?」
もうすっかりいつもの調子に戻ってニコリと笑う。
…うん。優愛はやっぱり笑顔が1番似合う。
その隣にいつも俺がいられればいいのに。
…いいや、隣にいよう。
優愛の笑顔だけじゃなくて、いろんな瞬間瞬間を隣で見ていたい。
「俺が料理くらい作れないとでも?」
思いっきり口を開けて、意外って顔をする。
そのおでこを軽く小突きながら…俺は、こんな優愛の表情も好きだって改めて思ったんだ。
--Chikage:Side End--