【完】溺れるほどに愛してあげる


「優愛っ?!」

「とっこ〜」

「優愛!大丈夫なの?!」





金田が助けに来てくれたから大丈夫だよ〜なんて言いながら考える。思い出したくないくらい嫌な出来事だったのに、金田の言葉を聞いて幸せな出来事に変わったんだ。





「これからあたしも金田もバリバリ働くからね!」

「よし、気合入れて頑張ろー!」





心配そうにあたしを見つめていたとっこは、あたしの様子を見ていつものとっこに戻った。





「ホットケーキ1つ!」

「ホットケーキの生地どこ?」

「あーーここにある!ちょ、後ろ通るぞ!」





厨房の中もわいわいと賑わっていた。


真剣な顔をしたり歯を出して笑ったり…


でも、もう不安になったりしない。

金田があんなにあたしのことを想ってくれてるって知ったから。





「優愛、仕事!」

「はーい…」





とっこに脇腹を小突かれながら、それでもあたしの目はずっと金田に釘付けだった。





「お疲れ様でしたーー!!」





気付くと、もう文化祭が終わる時間になっていた。


担任の先生が配った紙パックのジュースで乾杯をする。


みんな満面の笑みを浮かべていて、どれだけ充実した1日だったかがよくわかる。





「楽しかったね〜!」

「青木が生地をこぼした時はどうなるかと思ったけどな!」

「あ、あれは…清水が急に俺の名前呼ぶから…」





最後の方は口をすぼめているせいであまり聞き取れなかった。


その代わり真っ赤な顔で何となく伝わった。



それはみんなも同じのようで





「青木は清水に名前を呼ばれると驚くんだってさ!
俺が呼んでも無視るくせになー」





清水 美波ちゃんはクラスメイト。


すごく活発的で明るくて可愛い子。


青木は多分、美波ちゃんのことが好きで…って噂も流れてる。


うん、その噂は間違いないだろうな。


だってまだあんなにも耳が赤い。





「お、おお俺のことはどうでもいいんだよ!
それより金田!どうどうと遅刻してきやがって!」





自分の話題から他に移すのが上手いなぁ。


本当にその辺は頭が上がりませんよ…

< 96 / 154 >

この作品をシェア

pagetop