【完】溺れるほどに愛してあげる
「優愛っ?!」
「とっこ〜」
「優愛!大丈夫なの?!」
金田が助けに来てくれたから大丈夫だよ〜なんて言いながら考える。思い出したくないくらい嫌な出来事だったのに、金田の言葉を聞いて幸せな出来事に変わったんだ。
「これからあたしも金田もバリバリ働くからね!」
「よし、気合入れて頑張ろー!」
心配そうにあたしを見つめていたとっこは、あたしの様子を見ていつものとっこに戻った。
「ホットケーキ1つ!」
「ホットケーキの生地どこ?」
「あーーここにある!ちょ、後ろ通るぞ!」
厨房の中もわいわいと賑わっていた。
真剣な顔をしたり歯を出して笑ったり…
でも、もう不安になったりしない。
金田があんなにあたしのことを想ってくれてるって知ったから。
「優愛、仕事!」
「はーい…」
とっこに脇腹を小突かれながら、それでもあたしの目はずっと金田に釘付けだった。
*
「お疲れ様でしたーー!!」
気付くと、もう文化祭が終わる時間になっていた。
担任の先生が配った紙パックのジュースで乾杯をする。
みんな満面の笑みを浮かべていて、どれだけ充実した1日だったかがよくわかる。
「楽しかったね〜!」
「青木が生地をこぼした時はどうなるかと思ったけどな!」
「あ、あれは…清水が急に俺の名前呼ぶから…」
最後の方は口をすぼめているせいであまり聞き取れなかった。
その代わり真っ赤な顔で何となく伝わった。
それはみんなも同じのようで
「青木は清水に名前を呼ばれると驚くんだってさ!
俺が呼んでも無視るくせになー」
清水 美波ちゃんはクラスメイト。
すごく活発的で明るくて可愛い子。
青木は多分、美波ちゃんのことが好きで…って噂も流れてる。
うん、その噂は間違いないだろうな。
だってまだあんなにも耳が赤い。
「お、おお俺のことはどうでもいいんだよ!
それより金田!どうどうと遅刻してきやがって!」
自分の話題から他に移すのが上手いなぁ。
本当にその辺は頭が上がりませんよ…