【完】溺れるほどに愛してあげる


『行こう』


その3文字にどれくらいの想いが詰まっているんだろう…とふと考えてしまった。



それはあたしのメッセージに既読がついてから、返信があるまでに時間がかかったから。


たった3文字を打つのには長すぎたから。


あたしのメッセージを読んで、何かを思ってくれたのかなって。


喜んでくれてたら嬉しいなって。





「…ふわぁぁ…」





待ち合わせ時間より少し前に着くと、そこには大きなあくびをする金田の姿。


…眠そうだな。


実は日曜は1日中寝る日…とかだったらどうしよう…


急に不安が走る。


だけど、誘ったことには一片の後悔もないから少し小走り気味に金田の元へ行く。





「おはよう。眠そうだね?」





眠そうな目にあたしを映すと、まるで何でもないかのように言う。





「昨日、楽しみで眠れなかった」





1週間前くらいに聞いた言葉と同じだな…なんて思ってると





「今回のは本当に。真面目に寝れなかった」





と付け足してくるから何だか余計に嬉しくなった。


あたしが心の中で思ってることが伝わってるようで嬉しいのと、眠れないくらい楽しみにしてくれてたことが嬉しい。


うん、誘って良かったな…





「…ん」





恥ずかしそうに右手を出す金田。


え、え!?





「手、つないじゃダメ?」





そんな子犬みたいな可愛い顔で言うのは反則だと思う。


いつもは格好いいくせに…





「だ、ダメじゃないです…っ!」





差し出された手にあたしの手を滑り込ませる。


すると、きゅっと握られる。


暑いのに熱くない。心が温かくなるような感じ。



…こんな気持ちになるんだね。


好きな人があたしのことを好きでいてくれて、そんな人と手をつなぐのは。


ドキドキが伝わってしまいそうで恥ずかしいのに、それでも伝わってもいいやって。


そう思えるくらい幸せ。

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