ひょっとして…から始まる恋は

だから今、私のスマホの中には松下さんが知りたいと思っているかもしれない久保田君の連絡先が入っている。

もしも、彼女が知っていたら教えてと頼めば、先輩でもある松下さんの願いを無下に断ることは私には出来ない。


だけど、自分でも不思議とそれを聞いて欲しくないと思っていた。
久保田君のことを好きになれるかどうかも知れないのに、自分だけの秘密にしておきたいと感じていた。



（……こういうの卑怯かな）


情報を開示してやればいいのに…と思う自分がいない訳じゃない。
でも、それ以上に黙っておきなさいよ…と囁く自分が何処かにある。



迷いながら結局は松下さんに教えることもなく仕事を終え、家へと向いて帰り始めた＿＿。