ひょっとして…から始まる恋は
右腕を伸ばしたまま私を振り返る叔父。
パチッと瞬きを一度して、どうした?と問いかけてきた。


「あ、あの…」


どうして叔父を止めてしまったのか、ほぼ自分でも無意識だった。


「すみません、あの……折角のお話なんですけど、私はまだそういうのはしたくなくて…」


所謂お見合いじみた感じのことは苦手だと返事する。
叔父には申し訳ないと思うけれど、会いたくもない人と会うのは遠慮したい。


「そうか。いい人なんだけどな」


ガッカリしたように息を吐く叔父に、こっちは益々罪悪感を覚えた。


「ごめんなさい。折角叔父さんが気遣ってくれたのに」


シュン…と肩を落とすと仕様がないよと言ってはくれるのだが……。


「でも、もう少し思案してみてくれないか。お父さんからも玉の輿に乗れそうな相手がいたら頼むと言われてるしな」


唖然とする願いに父までグルだったのか、と呆れ返りそうになる。それでもその場では顔には出さずに、はい…と返事だけしておいた。


教授室を出ると秘書室では先輩二人が黙々と仕事をしている。それを見ると自分だけがサボっているような気持ちに襲われてしまい……

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