ひょっとして…から始まる恋は
(仕事しないと)
そう思ってデスクには着いた。
けれど、頭の中では叔父の言った言葉が渦巻いてばかりで、ちっとも集中出来ないでいた___。
浮かない顔でいたからだろうか、久保田君は私に会うなり何かあった?と聞いてきた。
「え…」
ソフトブラックな瞳が私を覗き込んでいる。
その目と合うと心臓がドキッと弾んだ。
「ううん。何もないの!」
動揺して声を跳ね上げてしまう。
久保田君は一瞬キョトンとした顔になったけれど、そう…と別に深追いしてくることもなく。
「元気だった?」
ほぼ毎日ラインで会話しているのにそう聞く彼に視線を向け、クスッと笑いたくなるのを堪えて、うん…と返事。
彼は私を見ると安心したように微笑みを返し、良かった…と一言漏らした。
「久保田君こそ仕事大変そうね」
前職の営業一課は社内でも忙しい部署の一つだ。
そこの外回りをする営業マンは、ほぼ毎日残業続きなのを私は知っている。
「うんまあね」
久保田君は平気そうに言うけれど、前に会った時よりも少し痩せているように思えた。