ひょっとして…から始まる恋は
「だけどね」


その先を言うのを躊躇ってしまった。
友達以上だとは思うけれど、まだ好きでもないとは言い出せなくて。


「俺さ」


私が目を伏せたままで黙っていたせいだろう。
久保田君が業を煮やしたように話し始めた。


「何も一遍に保科さんに自分を好きになって貰おうとか思ってないんだ。
ただ一緒にいる時間をもっと持ちたくて、話せる時間が増えていったらいいなと思ってるだけ」


職場も違うし、生活時間もバラバラだから…と理由を話す彼を見つめ、うん…と理解するように頷きを返す。


「だから、別に彼氏として意識してくれなくてもいいから。ちょっと親しい男友達みたいな感覚でいいからさ」


凄く譲歩してくれる久保田君は必死そうで、それを見ると申し訳なさばかりが先立つ。


「でも、それじゃ」


いいのかなと遠慮じみた思いも湧くが、今は無理をしても彼氏とは思えない気がしていた。


「いいよ、俺は気が長いから」


のんびり待てると言っている。
私よりも一途な気がする久保田君を見つめ、何だか根負けした様な気持ちになっていった。


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