ひょっとして…から始まる恋は
その背中を見つめたまま久保田君が考えていることが分からず、何だか詰まらないな、と思い始めた。



「……ごめん」


急に謝りだしたから驚く。
歩みを止めた久保田君が振り返り、私は彼のことを見上げた。


「靖の兄さんに紹介してやらなくてごめん。あの人、口は悪いけどイケメンだから会わせたくなかったんだ」


心が狭いよな、と自分を呆れている。
彼女も一緒にいるのに…と思ったけれど、藤田君のお兄さんだしな、とも思い__。


「いいけど。別に」


久保田君は隠し事もしないで素直に自分の胸の内を明かしてくれる。
それは好感が持てるけれど、返って自分が叔父の気遣いを黙っているのが心苦しくも感じだして……。



「私ね…」


話しても別に構わないかと思いだした。
叔父の言ってきたことは断ったんだし、と納得して。


「実は今日の午後、叔父に縁談を勧められそうになってね」


歩き出そうとした久保田君の足先が止まり、こっちも足を止める。

振り向いた久保田君は目を丸くしていて、それを見ると胸がきゅっと軋んだ。


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