ひょっとして…から始まる恋は
「あ……」


本棚の前に立っている人を見つけ、つい声を発してしまう。その人は声を聞くと振り返り、ニッコリ笑って、やあ!と右手を上げた。



「久保田君」


どうして此処に?と目を見開く。
脚立を持って近付くと、ひょいと取り上げられてしまった。


「どの本を取るの?」


彼は脚立を使わずに取れると言い、私は目的の本を指差す。彼はその本の頭に人差し指を引っ掛けて抜き取り、はい…と私に差し向けてきた。


「ありがとう」


受け取りなから違和感を感じる。
どうして彼が此処にいるのかが読めず、キョトンとして見つめた。


「まさかとは思うけど何も聞いてない?」


久保田君はそう言い、こっちは何が?と訊ね返す。


「いや、いいんだ」


そう言うと横を向き、そうか…と一人で納得している。こっちには何のことだかさっぱり意味不明なままで、両手に持っている本に視線を落とした。


「あっそうだ、急いで帰らなきゃ」


間もなく二時になる頃だ。
お茶の準備をしないといけないと慌てた。


「…待って。俺も行くよ」


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