ひょっとして…から始まる恋は
叔父は久保田君のあっけらかんとした態度が気に入ったらしい。いい子だからまた宜しく頼むよ…と彼に微笑みかけている。


「はい!是非!」


久保田君は声を上げ、それを聞いた私は穴があったら入りたくなる程恥ずかしくなって、その場から立ち上がって逃げ出そうとした。


「きゃっ!」


スカートの裾を間違って踏んでいたみたい。
前のめりに倒れ込みそうになり、慌てて久保田君が抱き留める。


「危ないなぁ。大丈夫かね」


叔父も流石にヒヤリとしたらしい。

私は久保田君に体を起こされながらええ…と呟き、テーブルの上に溢れたコーヒーの代わりを持ってきます…と言って膝を伸ばした。



「平気?保科さん」


足元の方から気遣う声がして、まともに視線も合わせられずに頷く。


「大丈夫」


なんとか歩けると自分を励まし、一歩ずつドアへと向かって行った。


ドアを開けて外に出ると、ふぅーと大きな溜息を吐き出す。外では先輩秘書の二人が何かあったの?と聞いてきて、それに再び心臓が跳ねた。


「ちょっと、ドジってしまって」


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