ひょっとして…から始まる恋は

はは…と情けなく笑い、コーヒーを淹れ直してきますと給湯室へ向かう。

先輩達はそんな私の背中をいつまでも見ているような気がして、何となく落ち着かなくて仕様がなかった。



給湯室に入ると、大きな息を吐き出した。
落ち着けとばかりに深呼吸を繰り返す私の心臓はバクバクと凄い速さで動いている。

それと言うのも、さっき倒れこみそうになった時に私を抱き留めてくれた久保田君の体からふわりとコロンの香りが漂い、それを嗅いだら急に心臓が跳ね上がって、ドキドキと鳴り出してしまったのだ。


まさか先週に引き続き、彼にホールドされるとは思わなかった。
彼の腕の中に収まったのは初めてでもないのに、妙な焦りを感じた。


周りに叔父や藤田君がいたからだろうか。
それとも咄嗟に触れた掌が大きくて、予想以上に力が強かったせい？

その割には優しく体に触れてきて、ホッ…と吐き出した息が耳朶にかかったせい？


とにかく何もかもがツボに嵌り、異様な心音に繋がったと思われる。


思われる…と心の中で繰り返し、バカみたいだ…と呆れた。