ひょっとして…から始まる恋は
思い出の場所
入学式から二日後の夜、医局恒例の花見会があった。
場所は大きな池がある公園で、毎年そこで行っているらしい。

私は新人秘書として、准教の先生方や叔父にせっせとお酌や料理を勧めていた。

たまにゼミの学生達からもお酌を頼まれ、それには少し困惑したつつも断ることもできずに注いであげていた。


「柚季ちゃん、学生にまで注ぐことはないのよ」


三波さんはそう言うけれど、断るというのがなかなか苦手な私。
はい…と返事をしたのはいいけれど、呼ばれるとどうしても動いてしまう。



「そういうところも変わらないよね」


そう言って笑ったのは藤田君だ。
外来医をしている彼も今日は参加ができると言って、この場所に駆けつけてきた。


私はあまり知らなかったのだが、大学病院の外来医をする医師は少ないらしい。

勤務が過酷だから…というのが理由らしく、それは整形外科も例外ではないみたいで、外来で勤務する医師は、藤田君を含めても三人しかいない。

しかも、若い彼には月に何度か当直もあり、急患が運ばれてきた時は、科を超えた治療や処置もする場合があると聞かされた。

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