ひょっとして…から始まる恋は
はい、と返事をしてドアに向かい、中に入ると心の隅で松下さんにお礼を言った。


(ありがとうございます。私を現実に引き戻してくれて)


多分あのまま誰も声を掛けてくれなかったら、私はぼうっと久保田君の立ち去った後を見ていたかもしれない。

下手をすると足先が痺れるまでその場にいて、彼のことばかりを考えていたかも。



(私……)


その先を考えるのは止めようと首を振る。
今は仕事中だ、と自分に言い聞かせ、せっせとパソコンの入力を始めた。


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