ひょっとして…から始まる恋は
崇めるようなスタンプを送ってきて、私は彼にとってそういう存在に近いほど祭り上げられているのか、と呆れてしまう。


『久保田君はほめ過ぎ』


さすがに照れくささを通り越してしまった。
変に自分を美化しないで、と送ると、じゃあどうすればいい?と訊き返してくる。


『ごくごく普通の扱いでいいから』


神でもなければしょっ中感動して貰えるような人間でもない。

そんな風に思うのも久保田君が私を勝手に想像しているせいだから変に意識しないで、と頼んだ。


『難しいなぁ』


頭を抱え込む彼のスタンプに笑い、いつの間にかいっぱいだった胸の中が空いてくる。



『私…』


そう文字を打ってハッとした。
今何を打とうとしたのかと慌て、それじゃあまた明日ね、と打ち直して送った。



『おやすみ』

『お疲れ様』


お互いにバラバラな文字を送り合ってスマホを手放す。

暗くなっていくディスプレーを見つめて溜息を吐き、これはもう間違いないな…と確信してしまった。



(ひょっとして私……)


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