ひょっとして…から始まる恋は
頭の中で藤田君のことが浮かんだ。
迷惑そうにしながらも、松下さんを拒否できないでいたな…と思った。


「美穂は男性に傷付けられて本気の恋を探すのをやめたの。それでアイドルみたいな年下の子ばかりを追って、キャーキャーと騒いでるって訳」


だから、久保田君のことも本気で思っている訳じゃないのと言う。それに私は何と答えていいか迷い、ただ頷きだけを返した。


「私ね、木下先生が美穂のことをずっと見てるのを知ってたの。昼間は知らん顔してたけど、美穂も何となくそれに気づいてたと思うのよ。

……ただ、また浮気されるんじゃないかと思うと怖くて、彼がそんなことする人じゃないと芯から信じきれないでいるみたい」


それだけ胸を抉られるような思いをしたの…と話す三波さんの声を聞き、あのキャーキャーと騒ぐ声の裏側にある心情を窺う。

松下さんはヤケ酒を呷っていたあの夜、胸の中にはきっと、元カレのことを思い浮かべていたのだと思う。



「……松下さん、どうするでしょうか」


気になって声にした。
自分のことは後回しでもいいから彼女に幸せな恋愛をして欲しい…と願った。


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