ひょっとして…から始まる恋は
「そうね…これだけは美穂が決めることだから何とも言えないけど、私は木下先生となら上手くいってくれそうな気がするわ」


医局で一番年下の彼を思いだし、そうだといいけど…と呟く。三波さんは心配しなくてもいいから…と微笑み返し、それよりも…と続けた。


「柚季ちゃんは彼のことをどうするかを決めないとね」


急に声のトーンを跳ね上げて笑う。
私はそんな彼女を凝視して、え…と呟いただけで押し黙った。


「あの子…久保田さんて、柚季ちゃんのことが好きなんでしょ？」


見たのよ…と言う声にビクッとして、何を？と声に出さずに三波さんを見つめる。
彼女はふふん…と鼻で笑い、目を細めてこう言った。


「藤田君の結婚式の時、彼に胸を借りて泣いてたじゃない」


ドキン！と胸が鳴って更に何も言えなくなる。

あの時、私はなるべく遠くから見ようと思い、モニターからも松下さん達からも遠ざかっていたのだ。

だから、私が久保田君の胸を借りて泣いてしまったことなど、誰も知らないだろうと思っていたのに……。



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