ひょっとして…から始まる恋は
意外な事実に返す言葉も失くしてしまう。
三波さんはふふっと微笑み、壁にも障子にも耳や目があるのよ…と言った。


「あの時、柚季ちゃんのことを見てる彼の顔が切なそうで、何となく、もしかして…と思ったの。

そしたら、昨日訪ねてきたじゃない。これはもう間違いないな…と確信してね」


それで必要以上に松下さんを近付けないようにした。

久保田君のキッパリと言い切る態度に松下さん自身も気後れをしていたところもあったけどね、と笑っている。


「これまでは一応それなりに年下からも相手にして貰えてたから、美穂は同じ感覚でいたと思うのよ」


だけど、側に私がいたから久保田君は曖昧な態度を見せたくなかったんだろう…と推測する。


「彼、本気みたいだから柚季ちゃんも押されちゃうわよね」


でも、乗った方がいいわよ、と言ってくる。
私は暗にオススメされている様な気分に陥り、困った表情で三波さんを見た。


「私は美穂にも柚季ちゃんにも、いい恋をしてもらいたいの」


三波さんは最終的にそう言って締め括った。

< 156 / 190 >

この作品をシェア

pagetop