ひょっとして…から始まる恋は
声にならず、そのまま棒立ちで彼を迎えた。
白い傘を手に持った彼は、ニコニコしながら私の前に立ち「おかえり」と言ってくる。


「え…あ…た、ただいま」


オタオタと返事をすると微笑まれ、私はますますキョトンとする。
まさかこんな早い時間に忙しい彼がいるとは思わず、何かあったのだろうかと窺ってしまった。


私が目をパチパチとさせ、口を半開きにしたままで見上げていたからだろうか、見つめられている彼はクスッと口角を上げて__


「そんなに驚いた?今日は午後から半休を貰ったんだよ」


そう理由を話すと、行こう…と腕を引っ張って歩き出す。
その引力に小走りする様な格好となった私は、足がもつれ込みそうになりながらも何とか彼の後を付いて行った。



周囲の空気はかなり湿気を含んでいた。
半袖から出た素肌も湿気を帯びて、じとっ…と汗ばんでくるくらいに湿度が高い。

勿論、久保田君が掴んでいる手首にも汗が滲んでくる様な気がして、何だか嫌だな…と焦った。


「…ねえ、あの……久保田君」


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