ひょっとして…から始まる恋は
その積極的な態度に呆れながらも自分は邪魔者だな…と思い、その場を離れた。

あちこちでお酌を繰り返しながら時々二人を振り返り、その度に彼に擦り寄っている松下さんを見つけ、チクッと刺す様な胸の痛みを感じていた。



二時間程度でお開きになった花見会の後、私は叔父をタクシーに乗せて見送った。
一緒に乗って帰らないか?と誘われたが、親戚という特権を使うのが嫌で断った。


「酔っ払いが多いから気をつけて帰るんだよ」


心配する叔父に大丈夫と笑い、手を振って見送る。
変に気疲れしたなぁ〜と思いつつ踵を返すと、そこには藤田君が佇んでいた。


ドキン…と胸を弾ませる私に彼が優しく微笑む。
どうして…と聞くまでもなく、彼の唇が開いた。


「一緒に帰ろう。どうせ同じ方向だろ?」


私が一人暮らしをしてないと誰かに聞いたのだろうか。自宅のある方向は同じだから…と言って歩き出した。



「藤田君もまだ自宅通い?」


後ろを追いながら訊ねると、うん…と振り返りながら答えが戻る。


「当直をしてるとどうしても生活が不規則になるからね」


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