ひょっとして…から始まる恋は
ビカッと空が明るく反射したのはその時だ。
ハッとすると同時にガラガラと大きな雷鳴が聞こえ、ビクッとしながら肩を竦める。


「なんかヤバいな。早目に雨宿りでもしようか」


久保田君はそう言うと、自分について来て…と走り出した。

私は慌てながらも彼の後を追い、近くにあった本屋の軒下へと逃げ込む。着くと同時に雨は降り出してきて、幸いにも濡れずに済んだのだけれど__。


「あー、しまった!濡れて髪の毛を拭いてやれば良かったんだ!」


残念がる声にギョッとして、目を丸くしてしまう。


「あーあ、馬鹿だな、俺」


いつだったか藤田君と二人だけで雨宿りをした時のことを思い出しているのだと気づき、ポカンと彼を眺めてしまった。

側に立っている人はブツブツと後悔を繰り返していて、そんなに残念がることでもないよ…と慰めた。


「濡れなくて良かったじゃない」


激しく降る雨を見つめながら、こんなのに降られたら大変だった…と思った。
だけど、久保田君は藤田君に張り合うような気持ちがあるのか、その言葉を悔しそうな表情で受け止める。

< 161 / 190 >

この作品をシェア

pagetop