ひょっとして…から始まる恋は
話しながら何を言いたいのかが分からなくなった。
纏まりのつかないまま、気持ちを話してしまったせいだ。


少し落ち着いた方がいいと思い、ふぅ…と息を吐き出した。言葉を無言で受け止めていた久保田君も、そんな私に合わせて口を開ける。


「俺…」
「私…」


お互いの声が被り、目を見つめ合う。
彼のソフトブラックの瞳の中に自分が写っているのが見えるとドキッとして、心臓の音が跳ね上がった。



「あのね」

「ちょっと待った」


間髪入れず久保田君が私の言葉を塞き止める。
こっちは想定外の言動に驚き、ぐっと息を吸い込んだ。


久保田君は眉間に皺に寄せたまま、じっと私のことを見つめ返した。
これまでの彼なら絶対に目が潤んでそうな展開だと思っていたのに違う。

おかげで私は彼のことを凝視してしまう格好になり、少しの間沈黙が続いた__。


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