ひょっとして…から始まる恋は
「俺さ」
口火を切った久保田君は、するっと視線を外す。態勢も前へと向き直り、私はそんな彼の横顔と対峙した。
「なんか今、頭の中が混乱してるんだ。さっき聞いた話の内容をそのまま素直に受け取ってもいいのかな…と迷ってる」
目を地面を向けたまま囁き、唇をきゅっと固く閉める。
私は彼に、受け取ってもいいよ…と言おうとしたのだが、それを声にするのも躊躇われて……。
「保科さんはさ」
話しだした彼に目線を向ける。
固く閉ざされていた唇は開き、彼の顔がこっちを振り向いた。
その真面目そうな表情にきゅっと胸が竦む。
彼の言うことをきちんと聞こうと思い、今度は自分が唇を結んだ。
「…ひょっとしてと思うけど、少しは俺のことが好きになってるの?」
少しは…と加減した表現で訊き返す。
そんな彼の言葉を頭の中で繰り返し、どう答えようかとも迷ったが……
「……うん…多分」
やっぱり半端にしか勇気が出なくて、多分…と曖昧な言い方をしてしまった。
その途端、いつも自分の気持ちを素直に言ってくれる彼には申し訳ないな…と思いだして、何とかして別の言い方はないものか、と頭の中で思案した。