ひょっとして…から始まる恋は
恥ずかしくて素直に好きとは言えなかった。
だけど、私の比喩表現は、ちゃんと彼には伝わったみたい。


「ああ、そうだね!」


大きな声でそう応え、ふわっと優しい顔で微笑む。

私はそんな彼の側にもっと居たいと感じて、ねえ歩かない?と持っているビニール傘を指差した。


「相合傘っていうの、一度してみたかったの」


相手は勿論自分が好きだと思う人。
その人が今、横に居るのを実感したい。


「勿論いいよ、俺もしてみたかったから」


コンビニに寄って傘を買おうと決めた時、久保田君は二本じゃなくて、わざと一本にしたんだと言った。


「雨が降ってきたら、この傘に君を入れて歩こうと思ってね」


願いが叶ったと喜ぶ彼は、傘を纏めていた紐のホックを外し、行くよ…とジャンプのボタンを押す。

パッ!と開いたホワイトの傘からは、ビニールの香りが広がってきたけれど……。



「どうぞ」


差し出す彼の顔は笑顔で、私はそれ見てるとやっぱりホッと安心できて嬉しい…と思った。



「お邪魔します」


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