ひょっとして…から始まる恋は
(でも、ウザい)


頭の中でそう呟き、直ぐにそれを打ち消す。
三波さんは悪気がある訳じゃないんだから、そう思っちゃダメだ。


「……大丈夫。近いうちに答えるから」


少し間を空けてそう言うと、三波さんは安心したよう口角を上げる。
デスクから離れる彼女の背中を見つめながら、さてどうしようかな…と視線を空に向けた。


先週私に告白してきた人は今、教授室の中にいる。
担当として彼の秘書を任され、たまには一緒に食事をしたり、お酒を飲んだりする間柄だけど。


(正直一度も眼中に入れたことがないと言うか。全く男性として意識もしてこなかったのよね)


それは自分にトラウマがあるせいだ。

過去に年上の男性から受けた手痛い仕打ちのせいで、年上と思うだけで嫌悪感が走る。

だから、彼がどんなにいい人だと分かってても、恋愛感情なんて湧いたことがなかった。

単純に仕事上の付き合いとしてしか考えてなかった。
食事もお酒も、秘書の仕事として割りきっていた。


でも、彼はそんな私のことも全部受け止める…と言った。

年上の男を嫌っていることも、年下の男にしか興味がないことも受け止める…と。


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